猿夢って何の話?駅の夢が“現実ににじむ”と言われる理由

早朝の駅、薄い光、眠い体。ホームに立つと、夢の中と同じアナウンスが流れた気がする――猿夢は、そんな「夢と通学(通勤)が重なる感じ」から怖さが立ち上がるネット怪談です。舞台は夢の中の電車と駅。アナウンスが段階的に進み、参加者が“ゲーム”のように巻き込まれていく。目を覚ましても、翌朝の駅でふと続きがよみがえる。現実ににじむ手ざわりが、長く尾を引きます。

ここでは、猿夢がどんな流れで語られ、どんな場面が選ばれ、何が人を不安にさせるのかを、落ち着いてたどります。最後に、似た不安に出会ったときの動き方と、早とちりを減らす「たしかめ方」も置いておきます。

まず知っておきたいこと:猿夢

  • 入口は駅のアナウンスと段階ルール(次へ進む合図がはっきりしている)。
  • 舞台は夢の中のホーム・車内・線路際。朝の通学・通勤と重なりやすい。
  • 起きた直後は地に足を戻す行動を一つ(カーテンを開ける/水を飲む/床に足裏を感じる)。

猿夢とは?

よく語られる型はこうです。夢の中で駅にいる。スピーカーから落ち着いた声が流れる。「まもなく列車が通過します」「次は◯◯の段階に入ります」。ホームには自分と何人かの見知らぬ乗客。アナウンスの指示に従う形で、場面はホーム→車内→線路際へと移り、段階が一段ずつ進む。参加者は順番に何かを“失い”、最後は目が覚める――。

描写は語り手によって違います。昔の制服の車掌、無人の車内、赤い非常灯、レールの金属の匂い。アナウンスはていねいで、逆に冷たい。優しい声で逃げ道を狭めるのが猿夢のコアです。目を覚ました後、通学・通勤の駅で同じメロディや放送を聞くと、夢の続きが現実ににじむ気がしてゾッとする――この“重なり”が記憶に残ります。

猿夢はどこで語られる?

ネット掲示板やまとめ、朗読動画で広まり、場所は“あなたの最寄り駅”に置き換えられて語られます。ポイントは地名よりも場面の性質。ホーム端、エレベーター脇、跨線橋の階段下、車内のドア前、先頭車両の窓。どれも「ルールのある場所」です。黄色い点字ブロック、非常停止ボタン、列車接近のブザー。現実にも合図と注意が満ちているため、夢のルールがすっと馴染みます。

時間帯は明け方から朝にかけて。寝起きの体、薄い光、同じ時刻に同じホームへ立つ習慣。繰り返しのリズムが、夢の段階ルールと噛み合います。

猿夢の合図と進み方

  • アナウンス:穏やかな声。敬語。短い指示。安心の声色で緊張を作る
  • 段階ルール:「第一段階」「第二段階」……と番号づけされ、先が決まっている印象を与える。
  • 移動の誘導:ホーム→車内→線路際の順に、安全圏から危険圏へじわじわ移す。
  • 繰り返し:夢が続き物のように数夜に分かれて起きることがある。
  • 目覚めの接続:起床後に同じメロディや放送を聞き、“続き”が頭に浮かぶ。

この運び方は「やめたいのに、次の段階が来る」というあの感覚を再現します。次が来る予告ほど怖いものはありません。

猿夢はどこがこわい?

現実の音が鍵。駅のアナウンス、発車メロディ、ドアのチャイム。日常の音が夢のトリガーになると、どこでも再演できてしまう。これが猿夢の強さです。

ルールと権威。駅は「ルールに従う場所」。アナウンスの言葉は権威を帯び、従わされる感じが生まれます。丁寧な敬語ほど逃げづらい。

段階の不可避。第一段階が来れば第二段階も来る。“次”が確定していると、人は今の自由を狭く感じます。

朝の生活と重なる。通学・通勤という避けにくい動線と、夢の舞台が一致する。回避できない重なりが不安を長引かせます。

自分が“参加者”。語りの多くで、読み手は見物人ではなく参加者。自分の体で受ける設定は、短い言葉でも強い余韻を残します。

猿夢はどう広まった?

ネット掲示板の書き込み、まとめ、フラッシュ、朗読動画……。2000年代のネット文化の中で、反復に強い構造(段階・アナウンス)を持つ話として再演され続けました。地名やメロディが地域で差し替えやすく、「私の通う駅でも起きるかも」に変換されるのが広まりの理由です。

猿夢のたしかめ方

正体当てより、心を落ち着ける「見方」を持っておくと扱いやすくなります。

  1. 段階を紙に出す。夢で出た順番(例:ホーム→車内→線路際)をメモに降ろし、頭の中の回転を紙へ逃がす
  2. トリガーを分解。メロディ/放送の文/時間帯――どの部品で思い出すかを切り分ける。
  3. 現実の手触りを上書き。朝、ホームで一度だけ深呼吸→足裏で点字ブロックの凸凹を感じる→空の色を見る。体の感覚で“いま”に戻る
  4. “次が来る”に名前を付ける。「予告に弱い」「段階に反応する」など、自分の癖にラベルを貼る。名前がつくと弱まることがある。

猿夢に似た不安に出会ったら

  • 目が覚めた直後の一手。カーテンを開けて日の光を浴びる/コップ一杯の水を飲む/窓辺に立って足裏で床を感じる。
  • 駅に着いたら。人の多い車両に乗る、ホーム中央に立つ、音量の小さいイヤホンで好きな曲を流すなど、自分のルールを一つ作る。
  • 夜は“終わりの儀式”。寝る前にスマホを机に置く→画面を伏せる→照明を一段落とす。一日の線引きを体に覚えさせる。
  • 強い不安が続くとき。独りで抱えず、身近な人に「変な夢を見て朝がこわい」と一言だけ共有する。言葉にすると軽くなる。

猿夢の場面メモ

文章やアイキャッチづくりのための“小物”。ありふれた部品だけで空気が作れます。

  • ホームの端:黄色い点字ブロック、風で揺れるポスターの角、非常ボタンの赤。
  • 車内:ドア上の案内表示、吊り革の列、窓に映る自分の顔と暗いトンネル。
  • アナウンス:「まもなく」「しばらく」「次の」。敬語のやわらかさ。
  • 朝の色:薄い青、白い息、コートの襟の布の手ざわり。
  • 足音:点字ブロックの凸凹に乗る靴底の感触。

猿夢は今わかっていること

  • どこ:夢の中の駅・車内が舞台。現実の駅の音がトリガーになりやすい。
  • 読みどころ:アナウンスの権威、段階の不可避、朝の生活との重なり。
  • 読み方:段階を紙に出し、トリガーを分解し、体の感覚で“いま”に戻る。

よくある勘違い

  • 地名が一致=実話とは限りません。地名は物語の“重し”に使われます。
  • 同じメロディを聞いた=続きが起きるとも限りません。音はただの合図に過ぎません。
  • 夢の解釈が正解というわけでもありません。解釈は複数あってよく、結論を保留しても大丈夫。

まとめ

猿夢は、駅という“ルールの場所”に、アナウンスと段階ルールを重ねてくるネット怪談です。現実の音で簡単に再演できるから、朝のホームでふと続きがよみがえる。正体当てより、読み方と戻り方。段階を紙に出し、トリガーを分け、体の感覚で“いま”に戻る。もし不安が残る日は、人の多いルートを選んで、好きな音を耳に。物語は物語として味わいながら、朝の一歩をいつもどおりに。

※駅や線路わきは危険が多い場所です。列車や周囲に注意し、点字ブロックの内側で待ちましょう。

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