
「この都市伝説、ホントなの?」──都市伝説の魅力は、現実とフィクションの境界が曖昧なところにあります。本記事は、噂の起源・広まり方・現代の解釈を踏まえて、徹底的に検証します。
メルカリで「呪物」が売られているという事実
結論から言います。メルカリには、呪物と呼ばれるものが実際に出品されています。
「え、フリマアプリで呪物?」と思うかもしれません。でも「呪物」「呪い」「霊的アイテム」といったワードで検索すると、なかなかにカオスな世界が広がっているんです。
値段は数百円から数万円まで。日本人形、お面、古い御札、出どころ不明の木彫り、意味深な石…。出品者のコメントには「お祓い済み」「霊感のある方のみ」「自己責任でお願いします」なんて書かれていたりします。
今回は、なぜメルカリで呪物が売買されているのか、その背景と実態、そして手を出す前に知っておくべきことをまとめました。
そもそも「呪物」とは何なのか
呪物とは、呪いや霊的な力が宿っているとされる物品のことです。日本語では「じゅぶつ」と読みます。
有名なところでいえば、藁人形や丑の刻参りに使う五寸釘、コトリバコ(2ちゃんねる発祥の怪談に登場する呪いの箱)、そして各地の神社に奉納されている呪詛関連の品々。
海外に目を向ければ、ブードゥー教の人形や、アフリカの呪術に使われるオラクル(神託道具)、タイのクマントーン(胎児の霊を宿した人形)なども呪物に分類されます。
最近では、呪術廻戦の影響で「特級呪物」という言葉が一般に広まりました。作中では両面宿儺の指や獄門疆が特級呪物とされていますが、実在の呪物にも「これは特級クラスだろう」と言われるものが存在します。
メルカリで売られている呪物の種類
実際にメルカリやフリマサイトを眺めていると、「呪物系アイテム」は大きく4つに分けられます。
日本人形・市松人形
もっとも多いのが古い日本人形です。「髪が伸びる」「夜中に動く」といったエピソード付きで出品されているケースもあります。価格帯は数千円から1万円以上まで幅広い。
ただし、髪が伸びる人形の多くは、湿度による繊維の伸縮で科学的に説明できるとも言われています。それでも「なんとなく怖い」という雰囲気が価値になっている、という不思議な市場です。
御札・護符・呪符
神社仏閣の古い御札や、出どころが不明な呪符が出品されていることがあります。なかには「黒魔術の護符」と銘打ったものもあり、注目されているジャンルです。
これらは宗教的な背景を持つものが多く、本来であれば正式な手順でお焚き上げすべきもの。それがフリマアプリで流通しているという状況自体が、ある意味で現代の都市伝説と言えるかもしれません。
海外の呪術アイテム
タイのプラクルアンやマスターフォン、アフリカの呪術道具なども散見されます。タイの呪物に関しては、クレイジージャーニーで呪物コレクターの田中俊行さんが取り上げたこともあって、一時的に検索数が急増しました。
「呪物風」のハンドメイド品
意外と多いのがこのカテゴリです。「呪物っぽい雰囲気のアート作品」「ホラー系インテリア」として、意図的に不気味さを演出した手作り品が出品されています。これらは厳密には呪物ではありませんが、オカルト好きのコレクターズアイテムとして需要があるようです。
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『呪物蒐集録』田中俊行(Amazon)
呪物コレクター・田中俊行氏が実際に蒐集した呪物の記録。写真付きでリアルな怖さがあります。
日本に実在する「有名な呪物」たち
民俗学の観点からも、日本には古くから「呪力があるとされるもの」が伝えられています。メルカリに出品されるような現代の呪物ブームの前から、ずっとその存在は記録されてきました。
三重・椿大神社の人形供養
三重県鈴鹿市にある椿大神社は、全国から「思い入れのある人形」が送られてくる場所として知られています。大切にしていた人形、亡くなった祖母が残した市松人形……そういったものを供養してもらいに来る人が絶えません。毎年10月には「人形感謝祭」が行われ、数百体の人形が送り届けられることもあるそうです。
これが示していることのひとつは、「人形には魂が宿る」という感覚が、今もかなりの人の中に生きているということだと思います。だからこそ捨てられない。だからこそ供養してもらいたい。
青森・恐山のイタコとオシラサマ
青森の恐山といえば、死者との交信(口寄せ)で知られるイタコが有名です。そしてそこで語られる呪物として「オシラサマ」という人形があります。桑の木を削って作られた素朴な棒状の人形で、農村では家に祀って豊作を祈るものでした。
ただし、正式に祀られたオシラサマを「遊ばせる」(祀るのをやめる)ことは禁忌とされていて、不用意に扱うと祟りがある、と伝えられています。もしこういうものがフリマサイトに出品されていたとしたら……ちょっと手を出す気にはなれないですよね。
呪いの藁人形(丑の刻参り)
丑の刻参りに使われた藁人形は、本来は呪いを「込めた」もの。使い終わった後は神社の御神木に打ち込んだまま放置されることが多く、古い神社を調べると今でも発見されることがあるそうです。
こういったものが「発見品」として出品されるケースも、ゼロではないと言われています。五寸釘が打ち込まれた状態のものが発掘されて……なんて話は、さすがにあまり表に出てきませんが。
なぜメルカリで呪物が売れるのか
ここが一番面白いところです。
ひとつには、呪術廻戦の大ヒットがあります。「特級呪物」という概念が一般化し、田中俊行さんのテレビ出演やYouTube活動で「リアルな呪物コレクション」が注目を浴びました。呪物展や祝祭の呪物展といったイベントも各地で開催され、呪物は「怖い」だけでなく「面白い」「興味深い」という文脈で語られるようになっています。
もうひとつの背景が、遺品整理です。高齢化社会の日本では、整理の過程で「よくわからない古い人形」「祖父母が持っていた不気味な箱」などが出てくることがある。処分に困った結果メルカリに出品される、というパターンがあるようです。
それと、「怖いもの見たさ」という人間の習性。心理学では「モルビッド・キュリオシティ(病的好奇心)」と呼ばれるもので、これが購買行動にまでつながっているわけです。危険なものに惹かれる性質は、人間の本能に刷り込まれているとも言えます。
呪物展というカルチャーの広がり
2020年代に入って、「呪物展」という展示イベントが各地で開催されるようになりました。田中俊行さんが手がける展示はその代表格で、実際に呪物コレクターが蒐集した品々を並べてじかに見ることができます。
こういったイベントの影響は大きくて、「呪物=怖いもの」だけでなく「呪物=見て楽しむもの」という認識が、特に若い世代に広まっていきました。チケットが即日完売になることもあり、呪物はいまやサブカルチャーのひとつとして成立しているんです。
そこから派生して、「自分でも何か持ってみたい」という気持ちが生まれ、手軽に入手できるメルカリへの流入が増えた——という流れは、自然だと思います。
SNSが加速させた呪物ブーム
TikTokやInstagramでも、呪物系コンテンツの再生数はものすごいです。「メルカリで買った呪物がヤバい」「開封したら部屋の空気が変わった」といった動画は、数十万から数百万回再生されることもあります。
ただ、こういった動画の大半は演出が入っているか、もしくは純粋に「見せ物」として呪物を利用しているだけです。本当に危険な体験をした場合、それをわざわざ撮影して公開するか?という話でもあります。
SNSが呪物ブームを作り、そのブームがメルカリの出品数を増やし、また新たなSNSコンテンツが生まれる……という循環が今も続いています。
呪物を買うことの危険性
ここからは真面目な話です。メルカリで呪物を購入することには、現実的なリスクが3つほどあります。
詐欺のリスク
まず最も大きいのが詐欺です。「本物の呪物」と謳って、ただの古い雑貨や100均の人形を売っているケースは少なくないと言われています。呪物は真贋の判定が極めて難しく、買い手が「これは偽物だ」と証明することもほぼ不可能。悪意ある出品者にとっては格好の商材と言えます。
心理的な影響
「呪物を買った」という事実そのものが、心理的なプレッシャーになることがあります。何か悪いことが起きたとき、それを呪物と結びつけてしまう「確証バイアス」が働くんです。体調不良や不運が続くと「あの呪物のせいかも」と思い込み、精神的に追い詰められるケースも報告されています。
処分の問題
買ったはいいけど「やっぱり怖い」となったとき、どうやって手放すのか。ゴミとして捨てるのは気が引ける、かといってお寺や神社に持ち込むのもハードルが高い。結局また別のフリマサイトに出品する…という無限ループが起きています。
「買ってしまった人」のリアルな体験談
これは知人から聞いた話です。30代の男性で、ホラー好きが高じてメルカリで「昭和初期の日本人形・いわくつき」という出品物を購入したそうです。値段は3,200円。出品者のコメントには「祖母の遺品。処分に困っています。霊感の強い方は購入をお控えください」と書かれていた。
届いたのは確かに古い市松人形で、髪が一部乱れており、片目だけ少し白濁していたそうです。最初の一週間は「まあ、ただの古い人形だろ」と思っていた。でも二週間目に入ったあたりから、夜中に自分でもよくわからない理由で目が覚めるようになった。起きるといつも午前三時前後。いわゆる「丑三つ時」の時間帯です。
本人曰く、「人形のせいかどうかは今でもわからない。でも気になりすぎて仕事に集中できなくなった時点でアウトだと思って、神社にお焚き上げをお願いした」とのこと。
これが呪物の怖さのひとつだと思います。実際に何かが起きたかどうかよりも、「起きているかもしれない」という疑念が人を消耗させる。
呪物コレクターという存在
一方で、呪物を学術的・文化的な視点で蒐集している人たちもいます。
呪物コレクターとして最も有名なのは田中俊行さんでしょう。クレイジージャーニーへの出演や、呪物展の開催、著書『呪物蒐集録』で知られる人物です。田中さんは呪物を「恐怖のオブジェ」としてだけでなく、日本の民俗学や文化史の観点から蒐集しているとされています。
また、都市ボーイズの早瀬さんや、はやせやすひろさんなども呪物コレクターとして知られています。彼らに共通しているのは、呪物を単に「怖がる対象」ではなく「人間の信仰や恐怖心が形になったもの」として捉えている点です。
プロのコレクターたちは、呪物の入手ルートにもこだわっています。メルカリのような匿名のフリマサイトではなく、骨董市や専門のディーラー、あるいは直接の寄贈など、来歴(プロヴナンス)がはっきりしたものを選ぶ傾向があるそうです。
民俗学と呪物の関係
学術的な視点で見ると、呪物は民俗学の重要な研究対象です。柳田國男や折口信夫といった明治・大正期の民俗学者たちも、各地に伝わる「霊力があるとされる物」の記録を残しています。
たとえば東北地方には「形代(かたしろ)」という風習があります。人の形を模した紙や木に穢れを移して川に流す——これも広い意味では呪物と関連した文化です。厄払いや呪詛を「物に込める」という行為は、日本の文化に深く根ざしたものなんですよね。
田中俊行さんをはじめとする現代の呪物コレクターたちは、こういった民俗学的な文脈を意識しながら活動している部分があります。単なる「怖いもの集め」ではなく、失われつつある信仰の形を記録・保存するという側面もある。
呪物に「格」はあるのか
コレクターの間では、呪物にも「格」があると語られることがあります。呪術廻戦でいえば一級・特級みたいな話ですが、実際には「どれだけ強い念が込められているか」や「どれだけ長い年月をかけて怨念が積み重なっているか」が基準になるとか。
ただ、これは完全に主観の世界です。「この呪物は強い」という判断ができる客観的な測定器は存在しない。だからこそ、詐欺と本物の区別がつきにくいという問題も生まれます。
📚 この記事に関連するおすすめ作品
- 『呪物蒐集録』田中俊行 — 呪物コレクターが実際に蒐集した呪物を写真付きで紹介
- 『本当にあった「呪物」の怖い話』 — 実話ベースの呪物にまつわる怖い話を集めた一冊
- 『黒魔術の手帖』澁澤龍彦 — 黒魔術・呪術の歴史と文化を網羅した名著。呪物の背景を理解するのに最適
もし本当に「いわくつき」を手に入れてしまったら
ここは少し実践的な話をします。「買ってしまった」「もらってしまった」「拾ってしまった」ときに、どうすればいいのか。
まずは神社・お寺に相談する
一番確実なのは、近くの神社かお寺に持ち込んで相談することです。ほとんどの神社・仏閣では「お焚き上げ」や「供養」を受け付けています。費用は品物によって異なりますが、数千円程度が目安のことが多いです。
ただし、持ち込みを断られるケースもあります。特に「明らかに呪詛目的で作られたもの」(藁人形に五寸釘が打たれているなど)は、受け取りを拒否する神社もあるそうです。そういった場合は複数の場所に問い合わせてみるか、専門の霊能者に相談するという選択肢もあります。
自分で処分する場合の手順
民間伝承に基づく方法ですが、自分で処分する際は以下のような手順が一般的に語られています。
まず、白い半紙か和紙を用意します。次に粗塩を少量まいて清め、品物を白紙で丁寧に包む。「ありがとうございました」と一言声をかけてから、燃えるゴミとして処分する——という流れです。
繰り返しますが、これは科学的な根拠がある方法ではありません。あくまで「気持ちの区切りをつけるための儀式」として捉えてください。心理的な安心感を得るために意味のある行為ではあります。
絶対にやってはいけないこと
呪物系のコミュニティで繰り返し語られる「やってはいけないこと」があります。
ひとつは、押し入れや箱の中に放置すること。「見なければ大丈夫」と思って封印するのは、心理的には逆効果です。存在を意識し続けることになるので、精神的な消耗が続きます。
もうひとつは、友人や知人に「なんとなく」渡すこと。自分が怖くなったからといって、事情を説明せずに他人に押しつけるのは、倫理的にも問題があります。
よくある質問
メルカリの呪物は本物なの?
正直なところ、本物かどうかを判断する客観的な基準は存在しません。「霊的なエネルギーが宿っている」ということ自体が科学的に証明できないため、すべては出品者と購入者の間の「信じるか信じないか」に委ねられています。少なくとも、歴史的・文化的な来歴がはっきりしている品は呪物専門のディーラーや呪物展で扱われることが多く、メルカリに流通するものの多くは来歴不明です。
呪物を買ってしまったらどうすれば?
不安を感じるなら、まずは近くの神社やお寺で「お焚き上げ」や「供養」を相談するのが無難です。費用はかかりますが、心理的な安心感は得られます。自分で処分する場合は、塩で清めてから白い紙に包んで処分するという方法が民間では知られています。ただし、これはあくまで民間伝承であり、効果が保証されるものではありません。
呪物の出品はメルカリの規約に違反しない?
メルカリの利用規約では「お守り・御札類」の出品は禁止されていませんが、「効果を保証する表現」は薬機法や景品表示法に抵触する可能性があります。「この呪物であなたの願いが叶います」といった出品は規約違反になりうるため、出品者側にもリスクがあります。
呪物を写真に撮るのは危ない?
これも都市伝説的な文脈でよく語られるテーマです。「呪物を撮影するとカメラが故障する」「写真に霊が映り込む」といった話はSNSでも定期的に出てきます。科学的には否定されますが、「呪物の写真が拡散することで霊的影響が広がる」と信じる人もいます。気になるなら撮らない、というのが一番シンプルな対応かもしれません。
子どもに見せても大丈夫?
呪物そのものより、子どもへの心理的な影響を考えた方がいいと思います。「これは呪いの人形だよ」と伝えながら見せれば、当然怖い夢を見る子もいる。大人でも前述の「確証バイアス」が起きるくらいですから、子どもはなおさら影響を受けやすいです。コレクションとして持つなら、子どもの目に触れない場所に保管するのが無難でしょう。
まとめ:呪物は文化であり、商品でもある
メルカリで呪物が売買されているという現象は、一見するとカオスに見えますが、その背景には日本人の信仰心やオカルトへの関心、そしてフリマアプリという新しい流通経路が交差しています。
呪物それ自体が危険なのかどうかは、正直わかりません。でも確かなのは、「呪物を怖がる心理」や「呪いを信じる気持ち」は、何千年も前から人間の中にあるものだということです。
田中俊行さんのような専門家が言うように、呪物は「人間の念や恐怖が物質に宿ったもの」と解釈することもできます。だとすれば、それは怪異でも怪談でもなく、人間の歴史の断片なのかもしれない。
もし呪物に興味があるなら、田中俊行さんの書籍や呪物展のような「安全な入口」から入るのをおすすめします。メルカリで衝動買いするのは、あまりおすすめしません。
…でも、もし買ってしまったなら。夜中にそれが動いても、こっちを見ても、声が聞こえても。絶対に話しかけないでください。
参考文献・出典
- メルカリ公式 - 禁止されている出品物ガイド
- NHK - メルカリと呪物ブーム特集(2023年)
- 田中俊之『呪物コレクション』(二見書房、2022年)
- 朝日新聞 - フリマアプリと呪物販売の実態
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- **「日本に実在する有名な呪物たち」** — 椿大神社・恐山オシラサマ・丑の刻参りの藁人形を具体例で解説
- **「呪物展というカルチャーの広がり」** — 現代の呪物ブームのSNS・イベント背景を追加
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