かみそりの刃が、一晩で復活した
使い古したかみそりをピラミッド型の箱の中に入れておいたら、翌朝には切れ味が戻っていた。
そんな話を聞いたとき、最初は「ただの都市伝説だろう」と思った。でも調べていくうちに、これが単純に否定できない話だとわかってきた。
「ピラミッドパワー」という言葉を聞いたことがあるだろうか。エジプトのピラミッドのような四角錐(しかくすい)の形をした構造物の内部には、不思議な力が宿るという考え方だ。
刃物を鋭くする。食べ物の腐敗を遅らせる。植物の成長を促す。瞑想の効果が上がる。
これらは昔から語り継がれてきた「ピラミッドパワー」の効果とされている。
本当にそんなことが起きるのか。科学的に証明されているのか。それとも信じたい人間の思い込みに過ぎないのか。
この記事では、ピラミッドパワーの歴史から現代の研究、実際の体験談まで、できるだけ公平に掘り下げていく。読んだ後に何かを感じてしまっても、それはあなたの直感が正しいからかもしれない。
「ピラミッドパワー」とは何か
四角錐の形が持つとされる不思議な力
ピラミッドパワーとは、ピラミッド型(四角錐)の構造物や空間の内部に、特殊なエネルギーや力が集中するという考え方だ。
エジプトのギザにある大ピラミッドを起点に、この「力」は20世紀になってから広く知られるようになった。ただし、ピラミッドが何か不思議な力を持つという発想自体は、もっと古くからあったとも言われている。
具体的にどんな現象が起きるとされているかというと、こういったものが挙げられている。
- かみそりや刃物をピラミッド内に置くと切れ味が戻る
- 生の肉や果物の腐敗が通常より遅くなる
- 牛乳がヨーグルト状に固まる
- 植物の芽吹きや成長が早くなる
- 瞑想や集中力が高まる
- 体の痛みが和らぐ
- 水の味が変わる
これだけ並べると「さすがに盛りすぎでは」と感じる人もいるだろう。実際、そう思う研究者は多い。
でも不思議なのは、こういった報告が世界各地から、何十年にもわたって続いていることだ。全員が全員、嘘をついているとも言い切れない。
特に気になるのは、これらの現象が「信じている人だけに起きる」とは限らないという点だ。懐疑的な研究者が実験してみたら何も起きなかった、という話もある一方で、試しにやってみたら本当に変化があったという報告も絶えない。どちらの側も、自分の結果が正しいと主張している。この「食い違い」こそが、ピラミッドパワーの謎を深くしている。
ピラミッドパワーが注目された背景
なぜピラミッドの「形」に力があるとされているのか。一般的に言われているのは、ピラミッドの角度と比率が特殊だという話だ。
ギザの大ピラミッドの場合、底面の一辺と高さの比率が、黄金比(おうごんひ)に近い数値になっているとされている。黄金比とは、1対1.618という特別な比率で、自然界や美術の世界でよく登場する数字だ。
この比率を持つ形が、何か特別なエネルギーを集めるのではないかという考え方が、ピラミッドパワー信仰の根底にある。
もちろん、これが科学的に証明されているわけではない。ただ、形が持つエネルギーという概念自体は、東洋医学や風水の世界でも古くから語られてきた考え方でもある。
風水では、建物の形や部屋の間取りが「気の流れ」に影響するとされている。インドのヴァーストゥ・シャーストラという建築思想でも、建物の向きや比率が住む人の運気に影響するとされている。こういった「形が力を持つ」という発想は、世界中に存在していた。ピラミッドパワーは、その現代版とも言えるかもしれない。
起源・発祥・歴史的背景
最初に「発見」したのは誰か
ピラミッドパワーが現代的な意味で広く知られるようになったのは、20世紀のことだ。
きっかけとなったとされているのは、フランス人の数学者アントワーヌ・ブヴィスという人物だ。1930年代、彼がギザのピラミッドを訪れたとき、ピラミッド内部の「王の間」と呼ばれる空間に、ネコや小動物の死骸が腐敗せずに乾燥したままの状態で残っているのを目にしたという。
ブヴィスはこれを不思議に思い、帰国後にピラミッドの模型を作って実験を試みたとされている。彼が主張したのは、ピラミッド型の空間の中では有機物の腐敗が遅れる、あるいは乾燥・ミイラ化が進むというものだった。
この話が広まり、1950年代にはチェコスロバキアの無線技師カレル・ドルバルが「ピラミッド型の箱の中にかみそりを入れると切れ味が戻る」という実験を行い、特許まで取得したと言われている。
このかみそりの話が世界に広まったことで、「ピラミッドパワー」という言葉が一般に定着していった、という流れだ。
ドルバルの特許については、「そんなものが本当に特許として認められたのか」と疑う人もいる。しかし、当時のチェコスロバキアの特許局が、ある程度の審査を経てこれを受理したのは事実だ。「効果があるから特許が取れた」とは言えないが、「まったく取り合ってもらえなかったわけでもない」という中途半端な事実だけが残っている。
古代エジプト人はピラミッドパワーを知っていたのか
面白いのは、古代エジプト人自身がピラミッドパワーを意図して設計したのかという点だ。
エジプトのピラミッドは、もともとは王の墓として建てられたとされている。死後の世界への橋渡しをする場所であり、王の魂を天へ導く装置として機能したとも考えられている。
ファラオの遺体をミイラとして保存する技術があったエジプト人が、ピラミッドの中に「腐敗を防ぐ力」が宿ることを知っていたとしたら、どうだろう。
あくまで仮説に過ぎないが、ピラミッドの設計に込められた幾何学的な比率や方角の正確さを見ると、単なる偶然とも思えない部分がある。
北極星への正確な向き、夏至・冬至の太陽との関係、内部の通路の角度。現代の建築技術を使っても難しいとされる精度で作られたこの構造物が、空間としての何かを持っていたとしても、不思議ではないかもしれない。
古代エジプトの神官たちは、星の動きを詳細に記録していた。天体の周期と建築の方角を意図的に組み合わせていたことは、現代の天文考古学でも指摘されている。宇宙のリズムに建物を合わせるという発想が、何らかのエネルギーの集中を生んでいた可能性は、完全には否定できない。
日本でのピラミッドパワーブーム
日本では1970年代から1980年代にかけて、ピラミッドパワーへの関心が高まった時期があった。
雑誌やテレビで「ピラミッドで食べ物が腐らない」「かみそりが復活する」といった実験が紹介され、ピラミッド型の商品も多く作られた。ピラミッド型の枕カバー、ミニチュアのピラミッド模型、瞑想用のピラミッドテントなどが販売されていたという記録もある。
このブームは、UFOや超能力、テレパシーといった「超常現象」全般への関心が高まっていた時代の流れとも重なっていた。
当時の少年誌には「ピラミッドパワーの実験をしよう」というコーナーが掲載されていたこともある。実際に段ボールでピラミッドを作り、なかに物を入れて観察したという体験を持つ人が、今の40代〜50代には意外と多い。「子供の頃にやったけど結果はよくわからなかった」という話をする人に何人か会ったことがある。でも、覚えているということは、それなりに印象に残る体験だったのだろう。
今でも一部のスピリチュアル系の商品にはピラミッドモチーフが使われており、「パワーストーンとピラミッドを組み合わせることで効果が高まる」という考え方を持っている人もいる。
実際の証言・体験談・目撃情報
「肉が腐らなかった」という報告
ピラミッドパワーに関する体験談の中でも、特に多いのが「食べ物が腐りにくくなった」というものだ。
インターネット上にはこういった投稿が見られる。
「自作のピラミッド模型の中に生肉の切れ端を置いておいた。外に出した同じ肉は翌日には変色していたが、ピラミッドの中のものは3日後も乾燥しているだけで腐敗臭がしなかった。」
もちろんこれが本当かどうか確認する方法はない。でも似たような報告は、日本だけでなく欧米でも繰り返し上がっている。
こういった報告に対してよく出てくる反論は、「ピラミッドの中は空気の流れが少なく、密閉に近い環境になるため乾燥が進みやすい」というものだ。つまり、腐敗を防いでいるのではなく、乾燥によってミイラ化が起きているだけだという解釈だ。これは一定の説得力がある。ただ、それでも「外に置いた同じ肉より変化が遅かった」という体験が続いている事実は残る。
かみそりの「復活」体験
もう一つよく語られるのが、かみそりの切れ味が戻るという話だ。
ドルバルの実験が有名になった後、世界各地でこれを試した人がいたとされている。
「もう捨てようと思っていたかみそりをピラミッド型の箱に入れて1週間置いた。試しに使ってみたら、最初ほどではないが確かに使えるようになっていた。気のせいかもしれないけど、それ以来ずっとやっている。」
科学的には、金属の結晶構造が時間をかけて安定することで切れ味が戻ることがあるという説もある。その場合、ピラミッドの形は関係ないことになるが、「ピラミッドの中だと早く戻る」と感じている人は少なくない。
かみそりの刃が傷む仕組みを考えると、微細なレベルで刃先の金属が変形していることが原因だとされている。室温・湿度・空気の動きなど、保管環境が刃先の状態に影響することは十分あり得る。ピラミッド型の閉じた空間が、何らかの安定した環境を作り出している可能性は、荒唐無稽(こうとうむけい)な話ではないかもしれない。
瞑想中に体験した「なにか」
ピラミッドパワーを実践している人の中には、ピラミッド型のテントや部屋の中で瞑想をした体験談を語る人もいる。
「ピラミッドの中で瞑想を始めてから、頭が静かになるのが早くなった気がする。あの空間は何かが違う。圧迫感はないのに、包まれているような感じがする。」
「ギザのピラミッド内部に入ったとき、王の間に一人でいると全身がじわっとしてきた。寒くはないのに鳥肌が立った。あの空間はただの石の部屋じゃないと思った。」
こういった感覚は、空間の密閉性や反響、独特の温度と湿度、そして「ここには何かある」という事前の思い込みが複合して生まれる可能性もある。でも実際に体験した人にとっては、そういった説明では片付けられないリアルなものとして残っている。
ギザのピラミッド内部は、外気温が高い夏でも内部は比較的涼しく、独特の反響がある。石灰岩でできた壁は音をよく吸収し、内部はほぼ無音に近い状態になるという。日常的な雑音から切り離されたその環境が、瞑想に入りやすい状態を作り出していることは否定できない。問題は、そこに「ピラミッドの形そのもの」が影響しているかどうかだ。それを確かめる方法が、今のところない。
植物の成長が変わった
ガーデニングや農業に関わる人の中に、ピラミッドを取り入れて植物の育ちが変わったという話をする人もいる。
「発芽させるときに小さなピラミッドを植木鉢の上に置いておいたら、何もしなかったポットより早く芽が出た。毎回そうなるとは言わないけど、あの一回は確かに差があった。」
植物の成長に影響を与えるものは光・水・温度・土の質など無数にある。ピラミッドの有無だけで変化したとは断言できない。ただ、こういった報告が繰り返されているのは確かだ。
面白いのは、ロシアやウクライナで1990年代から2000年代にかけて行われた農業実験の話だ。大型のピラミッド型構造物(高さ数メートル規模)を農地に建て、その周辺での植物の発芽率や収穫量を測定したとされる実験がある。結果の信頼性については議論があるが、「効果があった」とする報告が複数の農家から寄せられたとされている。もちろん追試が必要な段階の話だが、単なる個人の思い込みとも言い切れない規模の話だ。
水が変わる、という体験
あまり知られていないが、「ピラミッドの中に水を入れておくと味が変わる」という体験談も存在する。
「普通のペットボトルの水をピラミッドの中に一晩置いておいた。翌朝飲んだら、なんとなく柔らかい感じがした。気のせいかもしれないし、毎回そうなるわけでもない。でも何度か試して同じように感じた日があった。」
水の「記憶」や「構造」については、現代科学でも様々な議論がある。水の分子が特定の環境でクラスター(集まり)を形成し、その構造が変化することで味や性質が変わるという仮説は、完全に否定されているわけではない。ピラミッド型の空間がその変化を促す可能性があるかどうかは、まだ誰も確かめていない。
長尾さんの話
このブログを運営している長尾さんは、ピラミッドパワーについてこんなことを言っていた。
「昔、雑誌でピラミッドパワーの特集を読んで、段ボールで三角形の箱を作ったことがある。かみそりを入れてみたけど、正直よくわからなかった。でも何日か後に使ってみたら、なんとなく切れる気がした。プラシーボ(思い込み)かもしれないけど、あの実験を今でも覚えているのは、やっぱり何か引っかかってるからだと思う。」
さらにこんなことも言っていた。
「都市伝説って、調べてみると必ず『起源がある』んだよね。誰かが最初に体験して、それが広まっていく。ピラミッドパワーも、フランスやチェコの研究者が実際に試した話が出発点になってる。完全な作り話じゃなくて、何かを見た・感じた人がいるから広まったんだと思う。それが何なのかは、まだわからないけど。」
この「引っかかり」こそが、ピラミッドパワーという話が何十年も生き続けている理由かもしれない。誰かの体験から始まり、別の誰かが試してみて、また別の誰かに伝わっていく。その連鎖が、今も続いている。
科学的・民俗学的考察
科学はどう見ているか
現代の科学は、ピラミッドパワーについて基本的に懐疑的(かいぎてき)だ。懐疑的というのは「信じていない」という意味ではなく、「証拠がないから判断を保留している」というスタンスだ。
ピラミッドパワーを巡って、いくつかの実験が行われてきた。
1970〜80年代に複数の研究者が、食べ物の腐敗や植物の成長に対してピラミッド型の構造物が影響を与えるかどうかを調べた。結果はまちまちで、効果があったとする報告もあれば、まったく差がなかったとする報告もある。
問題なのは、実験の条件がきちんと統制されていないケースが多いことだ。温度、湿度、光の量、素材の質。これらを完全にそろえた状態で、ピラミッドの形だけを変数にして実験するのは、思ったより難しい。
そのため、科学的に「ピラミッドパワーは存在する」とも「存在しない」とも言い切れる段階にない、というのが現状だ。
科学の世界では、「証明されていない=存在しない」ではない。「証明されていない=まだわからない」だ。ピラミッドパワーは後者の状態にある。これはオカルトの話でも、妄想の話でもなく、単に「きちんと調べられていない」という話だ。そこには、スポンサーのつかない研究に予算が回りにくいという、現代の科学界の構造的な問題もある。
形状エネルギーという考え方
ピラミッドパワーと関連した概念に、「形状エネルギー(シェイプパワー)」というものがある。
これは、物体の形そのものがエネルギーに影響を与えるという考え方だ。特定の比率や形を持つ構造物が、空間内の電磁波や宇宙エネルギーのようなものを集中・反射・増幅させるという仮説だ。
この「形状エネルギー」は、主流の物理学では認められていない概念だ。ただ、似たような発想は中国の風水や、日本の建築学における「間取りと気の流れ」という考え方にも見られる。
全文化に共通して「形が何かに影響する」という直感があるのは、なぜなのだろう。
アンテナを思い浮かべるとわかりやすい。同じ電気を使っていても、アンテナの形状が変わると受信できる電波の周波数が変わる。形が電磁波と相互作用するという考え方は、工学的にはむしろ当たり前のことだ。ピラミッドパワーの仮説は、そのアナロジーを自然界の未知のエネルギーに当てはめたものとも言える。証明はされていないが、発想の構造としてはそれほど非科学的ではない。
プラシーボと「信じる力」
ピラミッドパワーへの懐疑派がよく持ち出すのが、プラシーボ効果(思い込みによる効果)だ。
「効果があると信じているから、効果を感じてしまう」という心理的なメカニズムは、医学的にも証明されている。薬と同じ見た目の偽薬(ぎやく)を飲んでも、症状が改善することがある。
ピラミッドパワーについても、「効くはずだ」という前提で体験をすれば、微妙な変化を「効果」として認識しやすくなる。これは「ピラミッドパワーが嘘だ」ということではなく、人間の認知がそういう仕組みになっているということだ。
ただ、植物の成長や食べ物の腐敗は、人間の思い込みとは無関係に起きる現象だ。そこでも同様の報告が続いているとすれば、プラシーボだけでは説明が難しい部分も出てくる。
さらに言えば、プラシーボ効果そのものも、まだ完全には解明されていない現象だ。「信じることが現実に影響する」という事実は、科学的に認められている。そのメカニズムが完全にはわかっていない以上、「思い込みだから意味がない」とも言い切れない。信じることが何かを変える、というのは、ピラミッドパワーより先に証明が必要な問いかもしれない。
電磁場・共鳴・宇宙線という視点
もう少しサイエンス寄りの視点から、ピラミッドパワーを説明しようとする試みもある。
ひとつは、ピラミッドの形状が特定の電磁波を集中・反射するという仮説だ。アンテナのような役割を果たし、特定の周波数の電磁波が内部で増幅されるというものだ。
別の仮説として、ピラミッド内部の空間で音や振動が特定の共鳴を起こし、それが有機物や水の分子構造に影響を与えるというものもある。
さらに、宇宙から降り注ぐ宇宙線(コスミックレイ)がピラミッドの形によって特定の方向に集中するという説まである。
これらはいずれも仮説の段階であり、現時点では検証が不十分だ。でも「あり得ない」と言い切れるほど荒唐無稽(こうとうむけい)でもない。
2018年にロシアの研究チームが発表した論文では、ギザの大ピラミッドが特定の電磁波を内部の「王の間」と「地下室」の部分に集中させるという計算結果が示された。この研究は「ピラミッドパワーを証明した」という話ではなく、あくまでシミュレーション上の結果だ。でも、主流の学術誌に掲載された論文であることは注目に値する。ピラミッドの形が電磁波と何らかの関係を持つことは、少なくとも計算上は否定されていない。
古代文明とエネルギーの知恵
民俗学や文化人類学の視点から見ると、興味深いことがある。
世界各地の古代文明が、似たような形の構造物を建てている。エジプトのピラミッド、メキシコのテオティワカン、マヤ文明の神殿、そして中国の古墳群。完全に同じ形ではないが、「山型・三角形」をした聖なる建造物というパターンが繰り返されている。
これらの文明が互いに影響し合っていたとは考えにくい。それなのに同じような形の構造物が生まれたのは、人間が直感的に「この形には何かある」と感じ取っていたからではないかという考え方もある。
「ピラミッドパワー」が仮に現代の都市伝説だとしても、その背景にある「形への畏れ(おそれ)」は、人類共通の何かを指し示しているのかもしれない。
日本でも、富士山や高野山、出雲大社など「聖地」とされる場所には、山の形や特定の地形が関係していることが多い。「高い場所・尖った形・天に向かう構造物」を神聖視する感覚は、宗教や文化を超えて人類に共通している。これが単なる偶然だとは思いにくい。形という視覚的な情報が、人間の感覚や意識に何らかの影響を与えているとすれば、その延長線上にピラミッドパワーを置くことは、あながち的外れではないかもしれない。
現代における意味|なぜ今でも語り継がれるのか
科学で説明できないことへの渇望
ピラミッドパワーが今でも語られる理由の一つは、「科学で全部説明できるわけじゃない」という感覚が広く共有されているからだと思う。
現代は情報があふれている。何かを調べれば、すぐに「それは証明されていない」「その実験は信頼性が低い」という反論が出てくる。
でもその反論自体も、100パーセント正しいとは言い切れない。科学は常に更新されるものだし、昨日「迷信」とされていたものが今日「事実」になることもある。
ピラミッドパワーを信じている人の多くは、「効果を証明したい」のではなく、「何かが起きている気がする」という感覚を大切にしているのかもしれない。その感覚を否定することは、誰にもできない。
「試してみたい」という人間の本能
ピラミッドパワーには、もう一つ独特の魅力がある。それは「自分でも試せる」という点だ。
段ボールや厚紙で三角形の箱を作れば、今日からでも実験できる。かみそりを入れてみる。果物を置いてみる。植物に向けてみる。
この手軽さが、ピラミッドパワーへの関心を長続きさせている理由の一つだ。霊感が必要なわけでも、特別な道具が必要なわけでもない。誰でも、今すぐ体験者になれる。
その「体験」の中で、何かを感じた人がまた話を広める。そのサイクルが何十年も続いている。
インターネットが普及したことで、このサイクルが世界規模で加速している。英語圏でも、ドイツ語圏でも、スペイン語圏でも、「ピラミッドパワーを試してみた」という動画や記事が今も投稿され続けている。言語が違っても、試してみたいという欲求は変わらない。
ピラミッドパワーグッズの現在
現代でもピラミッドパワー関連の商品は存在する。
瞑想用の銅製ピラミッド(人が座れる大きさのもの)、ミニチュアピラミッドの置き物、ピラミッド型の浄水フィルター、パワーストーンと組み合わせたアクセサリー。
値段もさまざまで、数百円のものから数万円のものまである。「効果があるから売れている」のか「信じたいから買われている」のかは、判断が難しい。
ただ、こういった商品が今も作られ、今も買われているという事実は、ピラミッドパワーへの関心が廃れていないことを示している。
銅製のピラミッドフレーム(骨格だけの構造物)は、特に瞑想や気功の世界で人気がある。「枠だけでも効果がある」という考え方があり、素材は銅が最もエネルギーを通しやすいとされている。なぜ銅かというと、電気の伝導率が高いことと、古代から儀式に使われてきた金属であることが理由に挙げられることが多い。これも科学的な裏付けはないが、「なんとなく理由がありそう」という感覚を持たせるには十分な説明だ。
スピリチュアルと科学の狭間(はざま)
ピラミッドパワーは、スピリチュアル(精神的・霊的なもの)と科学の間にある曖昧な領域に位置している。
完全に「オカルト」とも言えないし、「科学的事実」とも言えない。
この曖昧さが、逆にピラミッドパワーの魅力にもなっている。否定することも、肯定することも、どちらも完全にはできないから、話題として生き続ける。
「不思議なことがある」と感じたいとき、ピラミッドパワーという話はちょうどいい入り口になる。
現代人は情報過多の時代を生きている。すべてに理由があり、すべてがデータで説明されるべきだという空気がある。そんな中で、「説明がつかないが確かに何かある」という体験は、ある種の解放感を与えてくれる。ピラミッドパワーへの関心は、その解放感を求める人間の欲求と結びついているのかもしれない。
ギザのピラミッドが今でも研究されている理由
現代の物理学者や考古学者の中にも、ギザのピラミッドに興味を持っている人は多い。
2017年には、ピラミッドの内部にこれまで知られていなかった空洞(くうどう)が発見されたと報告された。ミュオン(宇宙線の一種)を使った透視技術によって発見されたこの空洞は、従来の説では説明がつかない謎の空間だという。
なぜそこに空洞があるのか。何のために作られたのか。現時点でも答えは出ていない。
ピラミッドはまだ、完全には解明されていない。そのことが、「何か不思議な力があるのかもしれない」という想像を支え続けている。
この空洞の発見は、学術論文として権威ある雑誌「ネイチャー」に掲載された。つまり、ピラミッドにはまだ私たちが知らない部分がある、という事実は、オカルトではなく科学が認めていることだ。未知の空間が何のためにあるのかがわからない以上、そこに何らかの「機能」がある可能性を完全に排除することはできない。
現代人がピラミッドに惹かれる心理
心理学的な視点から見ると、ピラミッドパワーへの関心は「コントロール感を取り戻したい」という欲求とも関係しているかもしれない。
現代は不確実なことが多い。病気、経済、人間関係。どれだけ努力しても、思い通りにならないことが山ほどある。
そんなとき、「この形の箱に入れれば刃が復活する」「この構造物の近くにいると気持ちが落ち着く」という体験は、「自分には何かコントロールできることがある」という感覚を与えてくれる。
ピラミッドパワーを信じることは、単純な迷信ではなく、こういった心理的な需要に応えているとも言える。
加えて、ピラミッドという存在そのものが持つ「スケールの大きさ」も関係しているかもしれない。何千年も前に、現代の建設会社でも難しいほどの精度で作られた構造物が、今もそこにある。その事実だけで、人間は「これには何かある」と感じてしまう。合理的かどうかはともかく、その感覚は正直なものだと思う。
もし自分で試すなら
正しい比率のピラミッドの作り方
ピラミッドパワーを家で試したいと思ったら、まず比率が重要だとされている。
ギザの大ピラミッドに近い比率を作るには、底面の一辺の長さを基準にして、高さを底辺の約0.636倍にする。たとえば底面が20センチの正方形なら、高さは約12.7センチになる。
斜面の角度は約52度になる。この角度が「ピラミッドパワーを生み出す」と言われている角度だ。
素材は段ボール、厚紙、木材、金属など様々なものが使われている。「どの素材がいいか」については意見が分かれているが、銅や真鍮が最もエネルギーを通しやすいと考える人が多い。初めて試すなら、段ボールで十分だ。
向きも重要とされている
ピラミッドパワーを試す際に、「向きを正確にすることが重要だ」という話がある。
具体的には、ピラミッドの4つの面のうち1つを北に向けるという方法だ。ギザの大ピラミッドもほぼ正確に北に向いており、この向きがピラミッドパワーに必要だとされている。
コンパスで方角を確認し、ピラミッドを正確に向けてから実験するのが、信じている人たちの間では一般的なやり方だ。
試すときに注意すること
ピラミッドパワーを試すとき、「比較対象を必ず用意する」ことが大切だ。
同じ食べ物を2つ用意して、一方をピラミッドの中に、もう一方を同じ部屋の別の場所に置く。温度や光の条件をできるだけそろえた状態で、数日後に比較する。
「なんとなく違う気がする」ではなく、「明らかに見た目・臭いが違う」という差が出るかどうかを観察する。これができれば、少なくとも個人レベルの「実験」としては成立する。
結果が出ても出なくても、自分で試した体験は記憶に残る。それ自体に意味があると思う。
まとめ
ピラミッドパワーが「本当に存在するのか」という問いに、今の時点で明確な答えを出すことはできない。
科学的に証明されているとは言えない。でも否定し切れる根拠もない。
古代エジプトから始まった謎の構造物が、20世紀にフランスとチェコの研究者によって「不思議な力の源」として再発見された。かみそりの話が広まり、世界各地で人々が実験を繰り返した。そして今も、ピラミッドに何かを感じている人がいる。
2017年には未知の空洞が発見され、2018年には電磁波の集中を示す論文が発表された。ピラミッドを巡る「謎」は、むしろ増えている。
この話が数十年にわたって生き続けているのは、「信じたい人がいるから」だけではないと思う。体験した人が「何かが起きた」と感じた記憶は、否定しようとしても消えない。
ギザのピラミッドにはまだ解明されていない空洞があり、その目的も、作られた経緯も、完全にはわかっていない。
ピラミッドという構造物は、まだ秘密を持っている。
もし興味があるなら、段ボールで小さなピラミッドを作ってみてほしい。底面が正方形で、高さと底辺の比率を0.636くらいにすると、ギザのピラミッドに近い比率になる。向きは北に合わせて。
そこに何かを置いて、数日後に確認する。
何も起きないかもしれない。でも何かが起きたとき、あなたはどう感じるだろう。
その「感じ」こそが、ピラミッドパワーという話が終わらない理由かもしれない。